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ノリリスク観光(ヒイロ、ミク)
投稿日 : 2016/10/16(Sun) 16:27
投稿者 デニス
参照先
天気晴朗、快晴もよいところなノリリスク。多くの漁師は海へ出て、それを相手にする人々も一息つくような時間帯。
待ち合わせに有名なアザラシ像に背を預けるのはゴスロリ服を着た少女。地面をつま先でトントンと叩いたり、前髪をいじったりして、少し落ち着かない様子である。
彼女の名前はミク=レトラン。協会からノリリスクへ派遣された契約魔法師だ。本日は領主セアンとその友人ヒイロに、ノリリスクの街を案内する手筈となっている。

「おせえっすな」

集合時間の5分前になっても2人は姿を表さない。
まさか蔑ろにされているのではないだろうか、とミクが疑問に思い始めた頃である。

「悪い! 集合場所を勘違いしてた!」

アザラシ像の後ろから姿を現したのは赤茶色の髪をした少年、ヒイロだ。

「あんまり待ってはいねっすけど、もう少し早く来てくれればありがてっす。ヒイロさんお一人ですか」
「セアンの奴は政務があるから来れないらしくてよ。だから代わりにこの俺がノリリスクを案内するぜ」
「はあ、私は別に構わねっすけど。んだば、今日は宜しくおねがいしますヒイロさん」
「任せてくれよ。俺も新参者だけど、ノリリスクは今はもはや俺の庭みたいなもんだからさ!」
「前にも申し上げた通り、飯屋の紹介どがはえので。地形とか、町並みを教えてくだせ」
「……はい」

この街案内の目的はミクがノリリスクの地を頭と体で覚えるためである。
事故で視覚をほぼ失った彼女。地形や町並みを正確に、的確に覚えていなければ咄嗟に動けなければ大変なことになってしまう。
至って真面目な動機と理由なのだが――思春期も真っ盛りなヒイロ少年にとって、同年代の女の子と街を歩くというのは、ある行為を想像させてしまう。

『これってデートじゃね』

前髪の間からチラチラと見える金色の猫目に、フリフリの可愛い服、控えめだが確かに存在感を感じさせる体。
それら全てを兼ね備えた美少女が隣を歩いているのだ。意識するな、というほうが無理である。

「ヒイロさん、聞いてますかヒイロさん」
「あ、ああゴメン! で、なんの話だっけ」

めくりめくる日々を妄想していたヒイロは慌てて返事をする。

「はぁ……やっぱ聞いてなかったべ。セアン様はいっつもすたに忙しいんですか?」
「先日、領地に混沌の軍勢が押し寄せてよ。その事後処理だって言ってたぜ」
「さよだが。むしろ私も政務を手伝えばえがったですかね」
「セアン曰く、ミクには政務よか先にノリリスクに慣れて欲しいらしいからよ。こっちに来て正解だぜ」
「ん。だば、今しばらく案内してもらいましょう」

ただ町並みを案内し、特徴的な場所を紹介し、時折される質問に答える無味乾燥なノリリスク観光。
それは傍から見ればとてもとても簡素なデート。いや、デートとすら呼べなかったかもしれない。
しかし、それでもヒイロにとっては満足だった。女の子とワンツーマンで街をめぐる、諦めかけていた青春を取り戻せたからだ。

「ここが街の辺境かな。あんまり舗装されてなくて、道が悪いから気をつけろよ」
「わかりまし……あっ」

ふらり、と態勢を崩したミクの体をヒイロは思わず抱き寄せる。
その瞬間である、彼の脳内に電撃が走った。初めて触れた女性の体、突然のアクシデントとはいえあまりに刺激が強すぎた。

『うおお 柔らかい、いい香り、温かい、いい香り! ヤバイ、今の俺って最高に青春してるんじゃね!?』
「面目ね。溝はちょっと見えねがったす」
「だ、大丈夫か。足とか挫いてないか?」
「大丈夫です。それより、そろそろ離してくれねすが。まだこの地形を覚えてねんで」
「ごっ ごめん!」

その後は特に何のイベントも無く、2人は元のアザラシ像の前へと戻ることになる。

「これでノリリスクの地はだいたい覚えだっす。今日はありがとうございました、ヒイロさん」
「こっ こっちこそ! 久々にノリリスクを見て回る機会があって新鮮だったぜ」
「んだすか。じゃあこのへんで」

去りゆくミクの背中を、ヒイロは見えなくなるまで見送った。
彼の顔がいやに赤いのは沈みゆく夕日のせいか、それとも。
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898788
投稿日 : 2018/05/03(Thu) 03:16
投稿者 choc
参照先 https://liftheightinsoles.com
Very nice article, just what I needed.
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948543
投稿日 : 2018/05/03(Thu) 01:14
投稿者 chocolate
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