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戦火(ジョシュ、サレナ、ソニア)
投稿日 : 2016/10/23(Sun) 21:04
投稿者 デニス
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クレッセン領には白百合・黒百合と称される2人のロードが居た。
白百合は領主マドゥの娘でありパラディンのソニア。黒百合は孤児の身分から領主の養女として取り立てられたセイバーのサレナ。
全く異なる境遇でありながらも互いの仲は良く、これからも手を取り合って領を治めていくに違いないと人々は思っただろう。


since XXXX 名も無き戦乱。
クレッセン領主『マドゥ』が謎の病により病没したために起きた戦乱である。
この機を逃すまいと、隣国のセイリュウ領主『ドラゴ』は和平条約を破棄してクレッセン領を強襲。
不意を突かれた形になるクレッセン軍は瞬く間に瓦解。セイリュウ軍は破竹の勢いで首都まで攻め入ってきたのである。
この時のセイリュウ軍には、後にカザン領へ召し抱えられるジョッシュの若き日の姿があった――

「各部隊は包囲を継続。なれど、火矢部隊は待機せよ。合図が在るまで撃ってはならない」
「ジョシュ様! しかし、それでは」
「これは無用な戦いだ。多くの犠牲を出さずとも勝つ方法は……いくらでもある!」

ジョシュの一瞥は反論の余地を与えず、従者を下がらせるのには充分な迫力を秘めていた。
誰もいなくなった天幕で彼は己の爪を噛む。何度も何度も派遣したはずの降伏の使者、その返事が一向に返ってこないのだ。
辿り着くまでに戦死したのか、或いは黒百合に斬り捨てられたか。最後に送ってから既に半刻は経過している。
この戦は無用なものである。それは先程の彼の言葉だ。ジョシュは国を武力で滅ぼす気など毛頭ない。

「早く降伏してくれ。さもないと、本当に」


何時の世も戦乱は起きる。血で血を洗い、骨肉を撒き散らし、悲しみの涙と物言わぬ骸だけが積み上がっていく。
ノーザラン国境近く。小さな国同士のごく小規模な戦乱、いや紛争は記録される事など無いかもしれない。
だが体験した者達にとっては永遠に焼きつくのだ。記憶の中に居座り続けるのだ。


「いいですか、サレナ。これから言う私の言葉を、よく聞いてくださいね」
「……はい。ソニア姉様」

ソニアは慈愛を込めた表情で愛する妹の顔を一撫でする。
夜空のように黒い髪、ルビーのように紅い瞳、柔らかい頬の感触――全ては今日で見納めになってしまうだろう。

「私は一分一秒でも長く、敵の軍勢を引きつけます。その間にサレナは隠し通路から逃げ遅れた民を引き連れ、ノーザランへ亡命するのです」
「ならばソニア姉様も一緒に!」
「ドラゴの目的は私と、私の持っている聖印。一緒に逃げれば地の果てまで追ってくるでしょう。そうなればノーザランまで戦火を飛び火させることになります」
「……嫌です。姉様を置いて行くなど私には出来ません。民の指揮は誰そかに任せ、私も一緒に刻を稼ぎます」
「それは駄目ですよ?」

トン、とサレナの額を人差し指で軽く小突いた。

「民を引き連れるのは貴方にしか出来ないこと、貴方にしか任せることは出来ません。与えられた役目を全うしなさい」
「私の与えられた役目はソニア姉様とともに在ること。マドゥ様に拾われ、ソニア姉様と姉妹の契りを交わしてからずっと変わりません!」
「貴方のような妹を持って、私は本当に幸せ者ね」

ソニアは柔らかく微笑むと、己の付けていたペンダントを外してサレナの首へ掛ける。
精霊銀で出来たそれはサレナの胸の上で静かに光る。

「これはクレッセン領主の付ける物。サレナなんかに」
「私はいつまでも貴方と共に有ります。どんなに離れても、私と貴方はずっとずっと繋がっています」
「姉様……」
「この世の果てでまた会いましょう。だから、今だけは笑って」

瞬間、姉妹の間を引き裂くように火矢が突き刺さった。
視線を走らせると3発目、4発目、次々と火矢が撃ち込まれる。とうとう総攻撃が始まったらしい。
ソニアが合図をすると、2人の兵士がサレナの手を引いて隠し通路へと導いていく。

「嫌っ。私はソニア姉さまと一緒に……一緒じゃないと嫌!」
「行きなさい、黒百合のセレナ。貴方が居る限りクレッセンの名が消えることはありません。何人たりとも忘れることはありません――」
「姉様……ソニア姉様!」
「さようなら、サレナ。民を頼みましたよ」


――ジョシュが吠える。
彼の合図も無しに火矢による総攻撃が始まっているのだから。
地を蹴り、天幕をまくり上げた彼が目にしたのは、赤々と燃えるクレッセンの街だった。

「馬鹿な。火矢は待て、と命令したはずだ。なぜ火の手が上がっている」
「ロード・ドラゴ様の命令です。中にいる者達を燻り出せと」
「なんだと…… 勝手なことを! 白百合のソニアさえ捕らえれば全てが丸く収まるのに、早まったことを!」

ジョシュは背後の事情を知っている、ドラゴがこの国を急襲した理由を。
勿論、領土の拡大と姉妹の聖印を奪取するのは大いにあるだろう。だが、それ以上に彼は白百合のサレナに執着していた。
彼女を手に入れるためにあらゆる智謀策略を駆使し、望みを叶えようと手を尽くしたがその思いは報われなかった。
いつしか愛情は憎悪へと変わり、此度の凶行に至った。それを止めることなどジョシュ如きには不可能であり、せめて犠牲を最小限に留めようと手を尽くした。
だが、それは無駄に終わってしまった。手に入れれぬなら破壊する狂王の片鱗が鎌首を上げ、今まさに振り下ろされたのだ。

「ロード・ドラコ! 確かめたいことがある」
「白百合のソニアの物と思われる聖印を確保しました」
「なん……」

本陣で彼を迎えたのはドラゴと、衝撃の報告だった。
白百合のソニアの死。最も避けるべきだった結末が用意されていたのだ。

「ふん。我に嫁げばこうはならなかったものを。哀れな女だな」
「どうするつもりだ。ロード殺しの罪、あらゆる非難は免れないぞ」
「クレッセン領主は跡継ぎを決めずに没した。それにより今まで仲睦まじかった姉妹仲にヒビが入り、領主の座を巡った骨肉の内輪もめが起きていた」
「……は?」
「白百合のソニアは殺された。領主の座を狙った妹、黒百合のセレナによってな。我々が内輪もめに介入しようとしたが一歩遅く、黒百合のセレナは城に火を放ちノーザランへ逃亡した」
「どこまでも……どこまでも卑劣な! それでもロードかッ!?」
「貴様が火矢兵を準備しなければ火を使うことはなかった、こんな結末にはならなかった。この意味が分かるか」
「命だ弄ぶだけでなく、全ての責を被せる気か……!」
「この作戦の立案者はジョシュ、お前だ。真実を広められたくなければ口を噤め。それが命令だ」

元素が胎動する――灼爛の炎がジョシュとドラゴの間に顕現し、真鍮で出来た椅子とテーブルを消し炭へと変えた。

「ほとほと愛想が尽きた。俺のやり方に添えないのなら、俺も力を貸すことは出来ない。今日限りにさせてもらう」
「ふん、勝手にしろ。だがこの地に留まることは許さないぞ」
「それはこちらの台詞。二度とこの地を踏むものか」

以後、ジョシュの目撃はノーザランのみに限られるようになった。それが何を意味するか、それは彼しか知らない。

この戦乱は一週間程でセイリュウ領『ドラゴ』側の勝利で幕を閉じる。
ドラゴは勝てば声高らかに己が戦果を主張し、世間もそれを信じた。全ては彼の思うがまま、サレナは姉殺しとして蔑まれる事になった。
しかしながら奇妙な噂も付いて回るようになった。白百合の聖印こそ接収されたものの、死体がいつまで経っても出てこない。
判官贔屓な国民の間では生存説が実しやかに囁かれた――

時は経ちX年。全ての物語はまたノーザランより始まる。
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408338
投稿日 : 2018/05/03(Thu) 17:06
投稿者 choc
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投稿日 : 2018/01/27(Sat) 12:24
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投稿日 : 2017/09/04(Mon) 00:44
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