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エレノアの秘密
投稿日 : 2016/04/01(Fri) 21:54
投稿者 夜羽
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突然の王からの呼び出し。それも玉座ではなく、王の私室に。
実は、心当たりがないわけでもなかった。

イサーク王の部屋に着く。軽くドアをノックする。

「 エレノア、招聘に応じ参りました 」

間もなく、入れという声が聞こえ私は中に入る。
声の主は当然ながらイサーク王である。

「 すっかりエカチェリーナの従者が板についたのうエリーよ。
  しかし、こうしてお前と一対一で話すのはあの時以来になるかの 」

王は軽く笑い、そう言った。
あの時とは、王と私が初めて会った日。

「 私を取り立てていただいた、あの日ですね 」

探るように、そう答える。

「 まさか、母娘二代して言いくるめられることになるとは思いもせんかった。
  まあ、その話も関連せんこともないが…… 」
「 その様子だと、私の母の消息が掴めた様子ですか 」

私が答えると、王はバツが悪そうに笑った。


母の名は『エイリス・フォーディウム』と言った。
私が言うのも何だけれど、王の話によると母も相当の技量を持った話術師だったそうな。
血は争えないと言うべきか。

そして何故、王の口から母の名が出てきたのかというと実は……


   − イサーク王とエイリスの間に生まれた子 −


この事は私と王しか知らない秘密。そして、姫様には言うつもりもない。
王の話によると『一夜限りの遊び』と称して母に口説かれ、それで私が出来た、と言う。

私と王が調べた限りでは……
生まれて間もない私を孤児院に置いてそのまま消息を絶ったというところまでは調べがついた。
推測でしかないが、おそらく私を権力争いに巻き込むまいとした配慮だろうと想像できる。

「 ……それで、母の行方は何処に? 」

王に話を促す。一瞬渋い顔をしたが、覚悟を決めた表情になり口を開く。

「 ……メディニアで見つかった。が、先日病死したという情報が入った 」

ずいぶん遠くまで流れたものだ、と思った。
だが、特に何かを思うところはなかった。もとより、母の顔も覚えてはいない。

「 これで、私が王の娘と知る者は居なくなりました 」

淡々と言う。これで良い。知らないとはいえ、母もおそらくはそれを望んでいるはず。
無駄にその意に背くこともない。何より、この国の正統後継者はエカチェリーナ姫だけ。それで良い。
不必要な火種は起こさなくても良い。あくまでも、私は姫様の従者である。それを徹底するのみ。

「 この件に関しては、私は墓場まで持ってゆく所存です。王も、他言せぬようお願いいたします」

それだけを言って、私は退室した。


後ほど、ノーザランを揺るがす大事件が起こることになるとは露ほども知らずに……
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