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闇中の道
投稿日 | : 2016/05/07(Sat) 19:45 |
投稿者 | : stephanny |
参照先 | : |
大坑道。それは各地をつなぐ道である。
都市を繋げる、いわば地下鉄の線路のようなものである。
所々ある駅のような、廃墟ながら茶屋や休憩所のように使えそうな場所には既に人が入り込み、逞しく商売に励もうとしている。
彼らはとにかく誰よりも早く開いている土地を活かす事に決めていた。
考えるのは後でいい。店主としての頭脳も、品格も、扱う物も後でいい。
救助や外の事を確かめるのは誰かがやってくれる。
彼らに親族も居ない。何者でもない自分が只賭ける事が出来る。
ただ開いている場所に向かって歩き続けた。焦ってはいけない。走り続ける事のできる人間など居ない。
ただ自分より速い者だけが同じ道へ来ないことを、
自分が行く先に拠点があることを祈りながら辿り着いた者達の場所。
彼らは新しい、これから広がっていく時代における最も早い勝者の形の一つだった。
場所は少し変わりペルミ領主ルフェリットもまた大坑道を歩いていた。
ペルミへと帰るためである。
新しい道、坑道についてはメイジであるリオから話を聞いていた。
おそらくペルミへとつながっているであろう整備された道。
所々で地上に出て方角を確認しつつ歩き続けていた。
ペルミまではまだまだ時間がかかる。
最後に地上を見てから2時間は歩いただろうか。
だがまだ半分程だろう。まだまだ歩く時間がある。
夜の街、ペルミを思い出すこの道を歩くことはルフェリットにとって心地良かった。
この静けさが、であろうか。それともこのほぼ変わらない景色が、であろうか。
同じリズムで脚を動かす。呼吸と心臓も活動の為に少し速まっていた。
自然にリズムが生まれ、そのリズムがルフェリットの意識を空へと変えていく。
道へと溶けていく感覚。
音楽に合わせて夢中に踊る事と似たそれは心地よいものであった。
周りには特に無く、ただ、自分が存在するということ。
そしてそれも状況へと溶けこんでいくという感覚。
ただただ心地よい、僧の瞑想のような境地。
そして溶けた先に残る
感覚の主体としての自分。
おそらくこの道を通る者、誰もが感じる自分ひとりの感覚。
繋がる先にものはあれど、今は一人。
身体という主体を載せる道。
孤独
空間や時と切り離され、デフォルメし、全ての人に突きつける
此処はノーザランの人、誰もが通る事の出来る大坑道。
そしてその身体を道へと載せるもの
行く先という未来への祈り。
身体を動かすだけであってもそれは先へと続いている。
祈りという主体を動かす道。
繋がり
デフォルメされた身体及び時間は未来への繋がりを見せる
此処はノーザランの祈り、全てが通る事の出来る大坑道。